動き回る子、手が出る子 ~感覚面からの視点~
よく、保護者から質問されることが
「うちの子多動で目が離せない。どうしたら良い?」
「よく学校で喧嘩して問題を起こす」
「何を考えて行動しているかわからない」
などの質問をよく聞きます。
では、なんで動き回るのか、喧嘩をしてしまうのか
これを私なりの視点で解説できたら良いと思います。
まず、今回も感覚の話がメインになるので、前の記事の感覚面についてを読んでたらわかりやすくなると思います。↓
記事:感覚統合ってなに?
https://okikotoba.hatenablog.com/entry/2019/10/08/214425
まず、多動の子について考えてみましょう。
みなさんがイメージしてる多動の子は動き回って止まらない。ってイメージが多いかもしれません。
では、なぜ動き回るのでしょうか。
私が見てきた子は下記のような理由がありました。
①目に入ったものが気になって
私が療育している中で、低年齢に多い理由がこれだと思います。子どもが小さい頃は目に入ったものに興味を持って急に道に飛び出したりしますね。それと止められて親に叱られて危ないことだと気づきます。
しかし、障がいを持っている子は危険な場面に遭遇する前に止められてしまうため「何が危険だったの?僕怪我してなよ?」と考えていることもあります。
また、感覚面の視覚が過敏で周りの者が全部入ってきてしまうことも注意が散漫になる理由になり、いち早く危ないもの(走ってる車・崖など)を見つけることができず怪我をしてしまうのです。
②倒れそうになるから・・・
私も話を聞いたり文献を読んで驚いたのですが、多動な子は定型発達児より、筋緊張が緩いことがわかりました。
筋緊張が緩いということは体幹を保持できず、姿勢を保持できない場合もあります。そのため筋緊張を入れて姿勢を保持したいために動き回ることがあるのです。
③ぐるぐる回るのが楽しいから
感覚に凸凹がある子は入りにく感覚(鈍麻)を入れるため、色々な行動に行います。固有受容感覚が鈍麻な子はドンドン歩いたりします。前庭感覚が鈍麻な子はぐるぐる回ることがあります。
なので、何も考えずに回っているわけでは無いので、ショッピングモールなど人前で回ってしまう場合は、ショッピング前にグルグル回すことや、前庭感覚が入る遊びを行ってあげることで予防できることがあります。
次に、動き回る子に私がどのような療育を行っているのか紹介します。
1.くるくる回る子には前庭感覚を入れる遊び
前庭感覚を入れる遊びでは、ジェットコースターをイメージする遊びや、回転遊具をイメージする遊びを行ってます。例えばキャスター付き椅子を使用して走り回ったり、くるくる回る椅子を使用してくるくる回します。ただ、リスクが伴うのと、家ではなかなかできないので、ほかの遊びも紹介します。
①抱っこして一緒にぐるぐる回る遊び
大人の方が回るのが早いのと、遠心力がかかり固有受容感覚も一緒に入るので沢山の刺激を入れることができます。
②芝すべりなど、ジェットコースターを模した遊び
私が住んでいる沖縄にはジェットコースターが無いので、芝すべりなどをやらせます。早く進むのと、自転車みたいに道を使わないので勝手にどこかに行ってしまう心配が無いので、安心して感覚を入れることができます。(転倒には注意してね!!)
③海遊び
私は療育でマリンプログラムを行っています。海では波に揺れる前庭感覚、波に負けないように力を入れる固有受容覚、水の冷たさや洋服がくっつく感覚の触覚、魚を探す視覚など色々な感覚が入るのでオススメです!!
④公園遊び
公園では、遊具で遊ぶことで感覚を入れることができます。例えば、滑り台は前庭感覚、はしご遊具は固有感覚などが入ります。また、自然と触れ合えるので身体が強い子に育つと思います!!
こんな感じで私たちの周りには前庭感覚を入れれる遊びが沢山あるので、みなさんも探してみてください!!!
では、次に手が出る子についてお話したいと思います。
手が出る子はなぜ手が出るのでしょうか?
何かむかついたことがあるから?喧嘩がしたいから?何も考えずに殴ってしまう?
私が関わってきた中で聞いたことがあるのが、「相手に何かされてむかついたから」、「殴ったつもりではない」「わからない」などがありました。
①相手にむかついたから
子ども達の喧嘩で一番多い理由ですね。ただ、発達に遅れがある子は衝動性を抑えきれず、考える前に手が出てしまいます。また、感覚に凸凹があり固有受容覚が鈍麻な子は軽く叩いたつもりでも、すごく強いことがあります。
②殴ったつもりではない
先ほど話した、感覚の凸凹が起因する事例です。軽く叩いたつもり、強く叩いてないと言うけど、傍からみたら強く殴ってるじゃん!!ってなることがあります。本人はそのつもりが無いにしても、本当に怪我をさせる可能性があるため、注意が必要です。
③わからない
私も初めて聞いたときは「何言ってるの?」ってなりました。しかし、子ども達から話を聞いたり、障がいを勉強していくと衝動的に手が出たり、周りを見えてなくて、ぐるぐる周り手が当たるなどの可能性が考えられました。また、ボディーイメージの苦手さで、体の大きさ、手の長さ、足の長さがわからずぶつかったり手足が当たってしまうこともあります。
上記の子に対する療育は固有受容覚やボディーイメージの苦手さがある子が多いので、そこにアプローチする療育を紹介していきたいと思います。
①固有受容覚
固有受容覚とは力を入れるときに使う感覚です。そのため、力を入れる遊びを行います。私はバランスボールでドッチボールを行ったり、メディシンボール(3キロぐらいのボール)を使用してしりとりキャッチボールを行ったりします。固有受容覚を入れることで、その後落ち着いた行動ができるようになったりします。また、運動を行った後に、瞑想など落ち着いたことを行うことで集中力が上がると言われています。
②ボディーイメージ
体のイメージができていなく、どれぐらい手を伸ばしている?などがわからないことが多いです。ボディーイメージを付ける練習として、真似っ子ゲームをしたり、ボルダリング・ツイスターなどを行います。体のイメージをする遊びを行うことが大事です。
簡易的な評価として、人の絵を書かせると良いです。イメージができない場所が小さくなったりします。なので、手先が不器用な子は指が無かったり、足のイメージが弱い子は手が大きく、足が小さかったりします。足のイメージが弱い子にサッカーをした後に絵を書かせると足が上手に書けるようになりました。
③衝動性
オニゴッコをやって次にトランプなど初めに沢山動く遊びを行い、その後静かにする遊び を行ったり、ビーチフラッグ・カルタなど合図があるまで動けない遊びを行ったりします。前者は動くことをニーズとしている子が多いので楽しいこと→課題の順で行うことで長続きすることがあります。後者は静と動が一体型の遊びなので本人は気づかない間に我慢を覚えることができます。衝動性は前頭葉が制御してるので、前頭葉を使用する運動系の遊びを行いながら止まる練習を行います。
まとめ
私たちが理解できない行動でも、必ず理由があります。その理由を見つけることでアプローチを的確に行え、保護者などの安心感、本人の安心感につなげることができると思います。なので、なんで急にどっかに行くの?なんで手が出るの?と思ったら、子どもの話を聞いたり、動く前のできごとを思い出してみてください。ヒントが隠れているかもしれません!!